ジョニイの無目的室

目的なく、ただつらつらと。

元気と人懐っこさ

TBSラジオの「たまむすび」の町山智浩の映画紹介のコーナーを
よく聴いている。
その中で原一男監督の新作、
水俣曼荼羅」が紹介されていた。


水俣病をテーマに、
制作期間20年、
上映時間6時間越えの大作となると、
これはかなりヘビーな社会派映画だと
身構えてしまうけれど、
町山によると、
意外にも劇中けっこう笑えたり
ほっこりする場面が多いらしい。


水俣病被害者に
補償金を払いたくない国や自治体と、
水俣病認定を勝ち取らんと戦う被害者を
描くというとても深刻になりそうな題材だが、
そこに出てくる水俣病の人たちが
こちらが想像するような
被害者然とした人ではなく、
元気でいきいきしていて明るいのだという。


また、内容も
国や行政との戦いだけでなく、
水俣病の人のプライベートやパーソナリティに
監督がどんどん入り込んでいくのだという。
恋愛話や新婚旅行、
ときには初夜の感想まで下世話に聞くという。


この原一男という人、
ゆきゆきて神軍」わ「全身小説家」は
僕も以前見ていて、一体どういう神経で
こんなものを撮っているのかと
思ったことがあるぐらい
凄まじい映画を作る人なのだけれど、
水俣曼荼羅」の劇中にも所々に
原一男の声が入ってくるらしいのだが、
まず監督自身がとても元気で人懐っこい
性格なのだという。


硬派な鬼才を想像していたけれど、
もしそんなこわい人なら、
カメラを向けられた対象が安心して
自分自身をさらけ出すはずがない。
一般人、しかも世間から迫害されるような
社会的弱者ならなおさらだ。


普通、人には話さないようなこと、
見せないような面をその人になら
ついつい見せてしまう。
おそらく原一男はそんな資質を
身につけているのだろう。


水俣病の深刻さは、
当然世間にもっと周知され
感心をもたれるべきだと思う。
国や自治体の不誠実な対応は腹立たしい。
ただ、水俣病当事者の人たちの
被害者というのではない人間としての別の一面。
この映画ではそれも水俣病の現状の告発と
同様に大事なものとして原一男
考えたんじゃないか。


当事者の人たちの青春の日々や
個人のキャラクターは
これまで誰からも顧みられてこなかったからこそ、
そこを掘り下げていったのではないか。
ときには下世話なやり方で。
本当はこの人たちだって普通に下世話な話も
できるんだとでもいうように。


社会の不都合な真実
真剣に向き合うのは大切なことだけれど、
でも現実は不都合な真実と並行して
普通の営みも同時に存在する。


この両極を元気と人懐っこさで
表に引っ張り出した原一男はやっぱりすごい。


理性と正義感で不正を告発するだけの映画を観ても、元気にはなれない。
この映画を見て元気な気持ちになれるというのは
今の社会を生き延びる上での一つの大きなヒントになり得るんじゃないかと思うと、
なんだか希望がもてる。


無論、まだこの映画は観ていない。